「伝統的現場練り漆喰 in 大野原」 実演イベント 報告
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現場で漆喰を作ることは、特別な場合を除き現在では少なくなっています。時間と手間がかかること、良い麻スサや消石灰が手に入りにくくなってきていること、経験のある左官職が少なくなり、必ずしも良い仕上がりになるとは限らないことなどの理由によるものです。

消石灰に糊スサを混ぜ練り上げて漆喰をつくることは、左官の原点でもあるので塗り壁を扱う者は忘れてはならない方法だと思います。

今回、香川県仁尾町にあるお寺の土塀の改修工事に使う漆喰を「現場練り」でやってみました。
作業するのは菅組の左官「久保雅計」氏。

糊の原料となる布海苔(ふのり)。これで650匁(もんめ)、今回使用したのは350匁。
[* 1000匁=1貫(かん) ・ 1貫=3.75kg ]

布海苔のテクスチュア。千葉県産だそうです。

ドラム缶を半分に切ったもので布海苔を煮込みます。水の状態から布海苔を入れ、薪で煮込むこと3時間。

通常、1貫の布海苔でこのドラム缶(100L)の7〜8分目(70〜80L)ぐらいの水の量が目安。
鍋料理を作ってるかのようですが・・

最初は混ぜると重いが、布海苔が溶け出すとシャバシャバで軽くなってくるそうです。

かなりトロトロの状態になってきました。 布海苔を篩(ふるい)にかけます。
篩の目は5厘(約1.5mm)。

1番糊をとった後の布海苔。
昔はこれを木の柱の養生に使ったそうです。

粘性の強い1番糊です。
麻スサ。最近は良質の物が少なくなったようです。昔の麻スサの分量は、布海苔1貫目に対してスサ1貫目だったが、今のスサは軽いのでこれだとスサが多すぎるそうです。

1番糊に麻スサを入れて練り込みます。


篩に残った糊の粕(かす)を再度釜に入れて煮返した2番糊を加えながら、さらに練り込む。

左官の久保さんが30年愛用する練り鍬。

糊と麻スサを練り込んだ状態。

消石灰を篩にかけて練り込みます。


  ちょっとクラブ代表もお手伝い。

こんな感じでほぼできあがり。
この状態でしばらく保存します。昔は木(杉)のトロ箱に入れて保管したそうです。杉の箱だと1〜2年は充分保存がきくそうですが、FRPや鉄の箱だと1ヶ月ほどで固まってしまい使えなくなるそうです。

畑に処分されていた漆喰の固まり。余った漆喰はこうして畑に戻されると、アルカリ性の肥料となって循環するのです。